技術情報

無電解ニッケル

無電解めっきとは

無電解めっきについて

 金属イオンを含む水溶液から金属を析出させる方法には、外部からの電流を用いる電気めっき法と、電気を作用させる必要のない無電解めっき法とがある。そして、後者には、被めっき物である金属を溶液に浸すだけでめっきが得られる浸漬めっき法と、化学的還元を利用した化学めっき法がある。

 

無電解めっき  ●浸清めっき法   イオン化傾向の差異による

          ●接触めっき法        〃
           ●化学めっき法   薬品の還元力による

 

浸漬めっき法

 硫酸銅の水溶液に鉄片を入れると、鉄に銅が析出する。これは、イオン化傾向の小さい金属のイオンを含む溶液に、イオン化傾向がより大きい金属を入れた場合、溶液にその金属を溶かす性質があれば金属は溶かされて、M→M++e(電子)となる。そのとき生じた電子は、その近くにある溶液中の陽イオンのうち、イオン化傾向が一番小さいものに作用してM++e→Mとし、いわゆる置換反応が成立するのである。

 このめっき法も異種金属のイオン化傾向の相違を利用するもので、電気化学的に貴な金属イオンを含む溶液中に、卑な金属を挿入する時、その卑な金属の溶解によって放出される電子が溶液中の貴な金属イオンヘ転移し、卑な金属表面上に貴な金属の皮膜が形成される。イオン化傾向の定量的表示は、一定条件下で水素を基準(0V)とした標準電極電位である。前例ではFe→Fe2++2e;E0=-0.44V、Cu2++2e→Cu:E0=+0.337Vで、一価が多いほど溶解(酸化)反応が起こっやすく、+値が多いほど析出(還元)反応が起こりやすいので、この組み合せはめっきが容易であることがわかる。しかし、めっきの容易な場合は、概して密着が悪く、このめっき例などは特殊用途にしか利用されていない。置換反応は、溶液が金属に作用できる間は続くが、析出した金属が一面を覆って溶液の作用が及ばなくなると止まってしまう。であるから、浸漬めっきでは、めっき厚さは1μmどまりで、例外としてスズめっきが5μm近くまで厚付けできるのみである。更に厚付けする方法として接触めっき法があるが、あまり使われていない。浸漬めっきは、同一個所で陽極・陰極反応が行われる関係上、一般に密着カが乏しく、多孔質である。従って、用途が限定され、多くは装飾品の色付け程度に使用されるが、スズめっきだけは工業的に使われている。

化学めっき法

 還元剤の酸化によって放たれる電子が金属イオンに転移し、金属皮膜を形成する。化学還元に基づくものであるので化学還元めっきとも言われている。化学めっき液は金属塩と還元剤を主成分とし、pH緩衝剤、錯化剤、安定剤その他の添加剤を補助成分とする混合溶液である。

化学めっき液の条件としては、次の6項目が考えられる。

 

(1)還元の駆動力が潜在すること。

 溶液中の金属イオンが還元されて金属になるための駆動力は、その金属の平衡電位と溶液中の還元剤の酸化還元電位との差で与えられる。

 金属の還元電位は、酸性側では金属イオン種により決まり、pH7までほぼ一定てあり、 アルカり側ではpHによって変動する。従って、めっき反応の駆動力はpHとともに変化する。

 

(2)めっき膜は被めっき体の面上だけに形成されること。めっき液は、配合されたま まの状態では還元反応を起こさず、被めっき体と接触した時のみ反応が始まるようにする。一般に還元反応の速度が高すぎると、めっき液内部でも反応が起こって粉状金属を析出し、これが触媒核となるので液は激しく発泡し分解する。従って、化学めっきにおいては、使用条件の下で酸化速度のおそい還元剤を用いるか、または溶液中の金属イオンを還元されにくい錯イオン状態にするか、いずれかの手段で還元反応を抑制する。

 

(3)めっき金属が触媒性をもっていること。

 めっき反応がスタートしても、析出した金属が触媒能を持たなければめっき反応は持続しない。従って、化学めっき反応は自触媒反応てあり、自触媒めっきの別名がある。触媒能をもつ金属は、周期律表第8族金属と第1B族金属およびそれらの合金に限られる。

 

(4)金属イオン置換反応が起らないこと。

 一般に、イオン置換によるめっき膜は密着性が悪く、剥離しやすい。

 

(5)めっき速度が液のpH、温度でコントロールできること。

 一般にめっき速度は、液のpHと温度に依存する。均一なめっき膜を得るためには、pHおよび温度の部分的変動を少くする必要がある。

 

(6)めっき液の寿命が長いこと。

 還元反応、加水分解等で生成した金属粉体および沈殿物を濾過で除去し自己分解を防ぐ。また、液の安定性向上に適正な錯化剤を加えると同時に、安定剤として触媒毒の金属を微量加える。

 還元剤は、一般に、酸化還元電位が低く酸化速度の比較的遅いものが使われる。

 次亜リン塩は酸化還元電位が非常に卑で、還元カが強く酸化速度が遅いため室温で反応が起りにくく、優れた還元剤である。そのアノード反応は

            H2PO2-+H20    H3PO3-+2H++2e

ホウ水素化物は8電子反応のため、還元剤の使用量は次亜リン酸塩に比較して非常に少ない。そのアノード反応は

             BH4-+2H20   BO2-+8H++8e

ヒドラジンは酸化されると窒素かスを発生し、還元皮膜はほとんど純粋な金属が得らる。そのアノード反応は

             N2H5   N2+5H++4e

ホルマリンはアルカリ側で強い還元カを示し、酸化速度が非常に速い。そのめっき液は比較的不安走で、安定剤の選択が極めて重要である。

次亜リン酸塩を還元剤とする化学めっきで皮膜に析出するリンは、カソード反応により次亜リン酸が還元されて析出する。

 ホウ素の析出もカソード反応による。ヒドラジンを還元剤とする場合、カソード反応でアンモニアが生成する。

 一般に化学めっきは、混成電位支配で起こる電気化学的プロセスである。

 化学めっきは、ここ数年の間に急速な発展を遂げてきている。このめっき法の利点は、

 1)電気を使わないために、電流や電圧の分布を考える必要がない。

 2)つき回りが良く、複雑な形状の部品にも均一な厚さのめっきができる。

 3)プラスチックなどの不導体上にもめっきができる。

などである。